5分でわかる!客観性を重視した文学の潮流
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この動画の要点まとめ
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写実主義|感情をおさえ、人間や社会をありのままに描く
人間の個性や感情を重視する ロマン主義 に対抗して、19世紀後半になると 写実主義(リアリズム) が登場しました。写実主義は 個性や感情をできるだけおさえ、見たものをありのままに伝えることを重視します。
個性や感情ばかりを重視すれば、偏見に満ちた、非現実的な作品になってしまう可能性があります。写実主義はそのような態度を批判し、現実を直視することや客観的な描写を行うことを主張したのです。
写実主義の作家とその代表作としては、 スタンダール の『 赤と黒 』、 バルザック の『人間喜劇』、 トルストイ の『 戦争と平和 』、 ドストエフスキー の『 罪と罰 』が挙げられます。
さらに、19世紀のイギリスで活躍した ディケンズ は、イギリスの下級社会を題材に、庶民の生活をありのままに描写した作品を著したことで有名です。彼の代表作として『 二都物語 』をおさえておきましょう。
写実主義⇒自然主義へと発展!
19世紀の後半には、写実主義を継承する 自然主義 がヨーロッパで広まりました。自然主義は、写実主義が発展することで誕生した文芸理論で、写実主義以上に現実を直視し、客観的に世の中を描写しようとする傾向がありました。
自然主義の作品には、女性差別・民族差別・政府の暴政など世の中のあらゆる問題が表現されています。写実主義以上に現実を厳しく見つめた結果、当時の社会が抱えていたあらゆる問題が浮き彫りになったのです。全体の傾向として 社会批判・社会風刺といったメッセージがこめられた作品が多く見られます。
例えばノルウェーの劇作家 イプセン の代表作 『人形の家』 は、女性解放をテーマにした作品として高い評価を受けています。また、フランスの作家 モーパッサン の代表作 『女の一生』 も女性をテーマにした作品となっています。
『居酒屋』という作品を著したフランスの エミール=ゾラ は、 ドレフュス事件 に際して フランス政府や軍部を厳しく批判しました。 これはフランスでおきた民族差別に関わる冤罪(えんざい)事件でした。
ユダヤ系軍人のドレフュスは、ドイツのスパイ容疑をかけられて終身刑を宣告されました。その後真犯人が見つかり彼は無実だったことが判明したのですが、フランス政府や軍部は最初その事実を隠そうとしたのです。当時のフランスに ユダヤ人に対する差別意識があった ことが分かる事件でした。
ロマン主義に対抗して写実主義が登場し、写実主義が発展して自然主義が登場しました。世の中を厳しく直視する自然主義の作品には、社会批判や社会風刺のメッセージが込められるようになったことも覚えておきましょう。
ポイントの2つ目は、「写実主義・自然主義文学」です。
ポイント1では19世紀前半のヨーロッパで登場した 古典主義 や ロマン主義 の文学作品を紹介しました。ポイント2では、主に19世紀後半に盛んになった 写実主義 や 自然主義 の文学作品を紹介します。