鎌倉時代の地頭は、 土地で働く荘民から税を徴収し、それを荘園領主に納める役割 を担っていました。
荘園内での権力が強くなると、税を徴収する対象である荘民と、税を渡す先である荘園領主と、それぞれに侵略を始める地頭も現れました。
このポイントでは、地頭が荘民と荘園領主、それぞれに対して、どのように侵略を行っていったか、見ていきましょう。

荘民に対しての侵略は、一言で言うと税の取りすぎ です。
横暴な振る舞いをしたり、税を過剰に徴収して私腹を肥やしたりしていたようです。
あまりにやりすぎた結果として、紀伊国阿氐河荘(きいのくに あてがわのしょう)という土地の荘民が、地頭の横暴を訴えた訴状が残っています。

荘園領主に対しての侵略は、税をきちんと納めないこと です。
荘園領主はこれを受けて、 地頭請 (じとううけ)や 下地中分 (したじちゅうぶん)という対策を考えました。

まず 地頭請 は、 荘園領主が地頭に荘園支配権を譲る代わりに、年貢をしっかりと納めることを約束させる ことです。
地頭は元々、税金を取って領主に渡すだけの役人です。
しかし、この地頭請で支配権を得たことによって、税率などの荘園のルールを自分で決めることができるようになりました。

地頭請によって、地頭たちも、最初はしっかりと荘園領主に税金を納めていました。
しかし段々と、税金を納めない地頭が現れてきます。
そのため今度は、 下地中分 という解決策が出てきました。
これは、 土地を荘園領主と地頭が半分ずつ支配する というものです。
つまり、土地の半分を完全に地頭に明け渡したということです。

荘園領主に逆らって、税金をしっかりと納めない地頭を 悪党 (あくとう)と呼びました。
現代語のように「悪者」という意味での悪党ではなく、歴史用語としてしっかり覚えておきましょう。
鎌倉幕府倒幕に参加した河内の楠木正成も悪党の一人でした。