5分でわかる!これだけは押さえよう!
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この動画の要点まとめ
ポイント
タイトル、注釈、意味の区切りに注目!
1つ目は タイトル です。これから読もうとする漢文にタイトルが付いていたら、内容を理解するためのヒントになります。例えば、授業の冒頭で登場した『秋風引』。ちなみに「引」には「歌曲」という意味がありますが、ここで注目してほしいのは「秋風」の部分です。ここから 秋の風を題材にした詩なのかな? と推測することができます。
2つ目は 注釈 です。定期テストや入試で出題される漢詩には、必ずと言っていいほど 注釈 が付いています。注釈は必ず確認し、内容の理解に役立てましょう。
3つ目は 意味の区切り です。実は、五言詩の場合、五文字のうち 最初の二文字 と 最後の三文字 がそれぞれセットになっているんです。漢詩を読むとき、二文字目と三文字目の間に線を引いてみてください。意味の区切りがはっきりして、読みやすくなりますよ。
例えば『秋風引』の一句目なら「何処(いづれのところより)」で意味のまとまり。「秋風至(あきかぜいたる)」で意味のまとまり。このように、五言詩の場合は 二文字目と三文字目の間に意味の区切りがあります。 しっかりおさえておきましょう。
対句と作者の主張にも注意!
訳のヒントになる6つのポイント。4つ目は 対句(ついく) です。このポイントは 律詩の場合にのみ 当てはまります。ちなみに律詩といえば、どんな形式でしたか?そう、全体で 八句 あるのが律詩でしたね。律詩の場合は対句に注目することで、意味をとらえやすくなります。
対句とは、ある2つの句が、まったく同じ文章構造だったり、同じ内容もしくは正反対の内容だったりすることをいいます。律詩では、多くの場合 三句目と四句目 、そして 五句目と六句目 がそれぞれ対句になっています。対句は、漢詩の内容を理解するうえで、大きなヒントになることがあります。
また、律詩に限らず、古詩などでも対句が見られることがあります。その場合は 奇数の句と偶数の句が対句 になることがあります。
5つ目のポイントは 作者の主張 です。漢詩には、作者が言いたいこと、表現したいことが詰まっていますが、その中でも特に 作者が強調したい部分 に注目しましょう。絶句(全体で四句の漢詩)の場合、基本的に 最後の一~二句は作者の主張 です。律詩や古詩の場合でも、例外はありますが、最後の一~二句あたりに注目することで 作者が主張したいこと を読み取れます。
例えば『秋風引』の最後の一句を見てみましょう。「孤客最先聞」の部分です。
注釈を見ると「孤客:一人寂しい旅人」とありますね。一方、二句目を見ると「雁群(がんぐん/雁の群れ)」とあります。鳥の一種である雁の群れ。つまり仲間がたくさんいる様子が描かれています。「一人寂しい旅人」である作者とは、正反対ですよね。
「早く都に帰って仲間に会いたい。でも、自分はただ一人、ここにいる。」そんな作者の強い気持ちが、最後の一句に表現されているんです。ここから、この漢詩でどんな感情が表現されているか、読み取れますね。嬉しい、楽しい気持ちを表しているのでしょうか?違いますよね。筆者の 寂しさ が伝わってきます。
このように、最後の一~二句からは、筆者の主張や強い気持ちを読み取ることができます。漢詩を読むとき、特に注目してあげましょう。
絶句の場合は「起承転結」が訳のヒント!
6つ目のポイントは 起承転結 です。これは四句でできている 絶句 の場合に当てはまります。
一句目(起句)で作者は 話を書き起こし始めます。 二句目(承句)ではその話題を継承します。つまり、一句と二句はつながっています。三句目(転句)では 二句目までとは話題が変わります。 場面の転換ですね。最後の四句目(結句)では まとめに入ります。
例外はありますが、絶句の場合はこの 起承転結の流れ が訳のヒントになります。
『秋風引』の訳を考えてみよう
以上、訳のヒントになる6つのポイントを紹介しました。最後に、これらのポイントをふまえて、実際に訳を考えてみましょう。
まずは タイトル の『秋風引』に注目。 注釈 を見ると「引:歌曲」とあります。つまりタイトルは「秋風の歌」。なにか秋風についての内容だろうな、と推測できます。
字数を数えると、『秋風引』は五言詩だと分かります。五言詩の場合は 二文字目と三文字目の間 に意味の区切りがあります。また、句数を数えると四句。絶句なので 起承転結 の流れがあると予測できます。
続いて、漢詩の意味を考えていきましょう。一句目。「何処」は注釈を見ると「どこから~か。」句の後半に「秋風至」とあるので 「どこからだろうか、秋風が吹いてきた。」 と訳せます。
二句目。「蕭蕭(せうせう)として」は注釈を見ると「風がもの寂しい様子」とあります。「雁群を送る」は「雁の群れを送る」と訳せます。まとめると、二句目は 「風がもの寂しげに吹き、雁の群れを送っている。」 と訳せますね。
三句目。場面が変わる転句です。「朝来」は注釈を見ると「朝」とあります。「庭樹に入りて」は注釈がありませんが、庭樹を訓読みすると「庭(にわ)の樹(き)」と読めますね。まとめると三句目は 「今朝、風が庭の木々の間に吹き込んだのを、」 と訳せます。
四句目。まとめの結句です。「孤客」は「一人寂しい旅人」と注釈にあります。この旅人とは 作者 のことだと考えられます。「最も先に聞く」とありますが、何を聞いたのでしょう?それは三句目を見ればわかります。「今朝、風が庭の木々の間に吹き込んだのを聞いた」ということですね。
訳をまとめると、次のようになります。
どこからだろうか、秋風が吹いてきた。
風がもの寂しげに吹き、雁の群れを送っている。
今朝、風が庭の木々の間に吹き込んだのを、
一人寂しい旅人(=私)が、最初に聞いた。
ちなみに、作者の劉禹錫(りううしゃく)は、昔の中国で役人の仕事をしていました。しかし、左遷(させん、低い地位に落とされること)されてしまい、都から地方へ追いやられてしまいました。『秋風引』は、そんな彼が一人で寂しいときの気持ちや境遇を詠んだ作品ではないか、と言われています。
自分にも本当は仲間がいるのに、左遷され、一人寂しく暮らしている。雁の群れとの対比で、作者の孤独がひしひしと伝わってきますね。
さぁ、皆さん、漢詩の意味をつかめるようになってきましたか?漢詩はただの漢字の羅列ではありません。作者の感情が込められた作品なんです。このコーナーで紹介した「訳のヒントになる6つのポイント」をふまえて、次の練習問題に挑戦してみましょう。
「これだけはおさえよう!」のコーナーです。漢詩を読む際に 訳のヒントになる6つのポイント を解説します。