5分でわかる!遺伝子組換え①
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この動画の要点まとめ
ポイント
生物から取り出したDNAに対して、別の生物のDNAを組込む
遺伝子組換え技術は、ある生物のDNAを別の生物のDNAに組込んで、新たな遺伝子を発現させることを指します。
遺伝子組換え技術はどのような手順で行うのでしょうか?
ヒトのDNAは、細胞がもつ核に収められていましたね。
今回は、ヒトのDNAの中でもヒト成長ホルモン遺伝子を、大腸菌に入れる場合を例に見ていきます。
ヒト成長ホルモン遺伝子は、もともと大腸菌がもっていない遺伝子です。
大腸菌にとって、ヒト成長ホルモン遺伝子は自分由来の遺伝子ではありません。
そのため、大腸菌にヒト成長ホルモン遺伝子を入れると、大腸菌はその遺伝子を排除しようとします。
単純にヒト成長ホルモン遺伝子を大腸菌に入れるだけでなく、大腸菌の中に留める必要があるのです。
どのようにすればいいのでしょうか?
大腸菌の中には、プラスミドという小さな環状のDNAがあります。
ヒト成長ホルモン遺伝子を大腸菌に入れる場合、まず大腸菌のもつプラスミドを取り出します。
そして、プラスミドへヒト成長ホルモン遺伝子を組込み、再び大腸菌へ戻すという操作を行います。
プラスミドは、大腸菌がもともともっている遺伝子なので、大腸菌の中に留めることができるのです。
制限酵素処理⇒DNAの回文配列を切断
遺伝子組換え技術には3つの段階があります。
実際の手順を見ていきましょう。
1つ目の段階は、PCR法で増幅させたヒト成長ホルモン遺伝子を、大腸菌から取り出したプラスミドに入れるということです。
次の図を見てください。
左には、ヒト成長ホルモン遺伝子、右には大腸菌から取り出したプラスミドが描かれています。
図で、それぞれのDNAが黒い線で部分的に切り取られているのが分かりますか?
一部が切断されたプラスミドへ、ヒト成長ホルモン遺伝子を組込むのです。
ただし、ヒト成長ホルモン遺伝子とプラスミドを切断する箇所は、どこでもよいわけではありません。
それぞれの塩基配列の切断面を同じにする必要があるのです。
ヒト成長ホルモン遺伝子やプラスミドを切断するのは、制限酵素という酵素です。
制限酵素は、特定の回文配列を認識してDNAを切断します。
ところで、回文配列とは何でしょうか?
次の図を見てください。
3種類の制限酵素が切断する回文配列の例が示されています。
中央上に描かれたEcoR Ⅰという制限酵素が切り取る回文配列に注目してください。
上の塩基配列は、左からGAATTCと並んでいます。
一方、下の塩基配列は、右からGAATTCと並んでいます。
それぞれの塩基配列を逆から読むと、同じ塩基の並びになっていますね。
このようになっているDNAの塩基配列を、回文配列といいます。
制限酵素は、DNAの回文配列を認識して図の黒い線で切断します。
このように、特定の回文配列を認識してDNAを切断する処理を、制限酵素処理といいます。
プラスミドにヒト成長ホルモン遺伝子が組込まれると、大腸菌へ戻されます。
このとき、プラスミドはヒト成長ホルモン遺伝子を運ぶ役割を果たしています。
プラスミドのように、導入する遺伝子を運ぶものを総称して、ベクターといいます。
遺伝子組換え技術について、詳しく見ていきましょう。