ヒトの卵形成のプロセスを見ていきましょう。

ヒトの卵形成のプロセスは、女の子が誕生する前からその体内で始まっています。
次の図を見てください。

卵の一番最初のもとになる細胞を、始原生殖細胞といいます。
始原生殖細胞の時点では、まだ精子になるか卵になるかが決まっていません。

胎児の体内にある始原生殖細胞はまず、将来卵巣となる場所へ移動します。
将来卵巣となる場所からは女性ホルモンが放出されています。

始原生殖細胞は、女性ホルモンにさらされると分化を起こして卵原細胞になります。
卵原細胞になって初めて、この細胞が将来卵になることが確定するのです。
始原生殖細胞の時点では、まだ精子になるか卵になるかが決まっていないことがポイントです。

次に、卵原細胞が体細胞分裂によって増えます。
体細胞分裂は、クローンを作る分裂でしたね。
よって、全く同じ卵原細胞がたくさん作られます。

精子形成のプロセスでは、男の子は精巣に精原細胞がたまった状態で誕生しました。
しかし、卵形成のプロセスの場合は、少し異なります。
女の子が誕生する前に、卵原細胞はさらに成長して一次卵母細胞になるのです。

配偶子形成のための減数分裂は、一次卵母細胞の状態でスタートします。
図で、黒枠で囲まれている部分は減数分裂のプロセスを表しています。

減数分裂のプロセスは、第一分裂前期で一度止まります。
そして、女の子は卵巣に一次卵母細胞がたまった状態で誕生します。
女の子が誕生してからしばらくは、減数分裂のプロセスは止まったままということですね。

女の子は、10歳頃から思春期を迎えます。
思春期には第二次性徴が始まり、女性ホルモンが多く放出されます。
一次卵母細胞が女性ホルモンにさらされると、減数分裂のプロセスが再開するのです。

精子形成のプロセスでは、一次精母細胞が第一分裂を経て2つの二次精母細胞になり、第二分裂を経て4つの精細胞になりました。
しかし、卵形成のプロセスの場合はそれとは異なります。

一次卵母細胞が第一分裂を経ると、1つの二次卵母細胞と1つの第一極体が作られます。
1つの細胞から、大きさの異なる2つの細胞が作られるわけですね。

減数分裂のプロセスは、第二分裂中期で再び止まります。
そして、排卵によって二次卵母細胞が子宮へ送られます。
減数分裂のプロセスは、二次卵母細胞が精子と出会うことで再開するのです。

さらに第二分裂を経ると、二次卵母細胞からは1つの卵細胞と1つの第二極体が作られます。
ちなみに、第一分裂で作られた第一極体からは2つの第二極体が作られます。
第一極体や第二極体は、受精にかかわらない細胞で、新個体の体の一部になったりするわけではありません。

卵形成のプロセスは、精子形成のプロセスと異なり、1つの一次卵母細胞から1つの卵細胞が生じます。
減数分裂終了後には、1つの大きな卵細胞と、3つの小さな極体ができるのですね。

ヒトの卵形成のプロセスを、精子形成のプロセスとの違いを意識しておさえましょう。
減数分裂のプロセスが2回中断されることが特徴です。
また、第一分裂によって一次卵母細胞から二次卵母細胞へ変化するタイミングで染色体数が半減することも覚えておきましょう。