種子に関する植物ホルモンを見ていきましょう。
今回は、発芽に関する植物ホルモンに注目します。

発芽せずに種子の状態でいることを、休眠といいましたね。
必要な条件がそろって種子が発芽状態に移行することを、休眠打破といいます。
休眠打破はどのようなプロセスで起こるのでしょうか？
次の図を見てください。

これは種子の断面図です。
発芽に必要な条件は、胚で認識・受容されます。
その条件とは、水・酸素・温度の3つです。

植物の多くは土の中で発芽しますね。
そのため、多くの種子にとって、光は必須の条件ではありません。
あとで、紛らわしい内容が登場するので、少し注意しておきましょう。

発芽に必要な条件が胚で受容されると、ジベレリンという植物ホルモンが合成されます。
ジベレリンは糊粉層に対して分泌されて作用することが特徴です。
糊粉層とは、胚乳と種皮の間に位置する層です。

ジベレリンが糊粉層に作用すると、糊粉層からアミラーゼという酵素が合成されます。
アミラーゼはヒトの唾液にも含まれており、デンプンを糖に分解する働きがあります。
糊粉層から分泌されたアミラーゼは、胚乳に含まれるデンプンを糖に分解するのです。

アミラーゼによってデンプンから作られた糖は、胚に吸収されます。
胚はデンプンを吸収することができません。
しかし、糖を吸収して成長することができるのです。

また、デンプンは水に溶けませんが糖は水に溶けることができます。
そのため、デンプンから糖が作られると種子の中の浸透圧が上昇していきます。
すると、種子はまわりから水分をどんどん吸収します。
このように種子の体積が増加し膨圧が上昇することで、種皮が破れて発芽することができるのです。

最後に、糊粉層で起こっている反応に注目しましょう。

胚で合成されたジベレリンが糊粉層に分泌されると、アミラーゼが合成されましたね。

糊粉層では普段、DELLAタンパク質がアミラーゼの合成を抑制しています。
ところが、胚でジベレリンが合成されて糊粉層に作用すると、DELLAタンパク質の働きが抑制されるのです。
このようなメカニズムによって、糊粉層からアミラーゼが合成されるのですね。