5分でわかる!慣性力
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この動画の要点まとめ
ポイント
例えば、駅のホームで停止している電車の中をイメージしてください。電車の天井にはつり革がぶら下がっていますね。電車が右向きに加速度運動をすると、つり革が移動と逆の左向きに傾きます。電車の中でこのような光景は見たことがあると思います。なぜつり革は傾くのでしょうか。今回は、この傾く原因を 慣性力 によって説明していきます。
静止しているボールが運動をしているように見える?
慣性力とはいったいどのような力なのでしょうか。次の図を使って考えていきます。
右には静止しているボールがあります。静止しているということは、ボールには力がはたらいていませんね。つまりF=0です。その左側には、クマちゃんが加速度A[m/s2]で右向きに走っています。静止しているボールは止まっている人から見るともちろん静止しています。しかし、動いているクマちゃんから見るとボールは 動いてしまう のです。
言い換えると、右向きに加速しているクマちゃんの場合、ボールは進行方向と逆の左向きに、自分と同じ大きさの加速度A[m/s2]で運動によって動いているように見えるということです。
ボールには力がはたらいていないので、ボールが加速度を持った運動をして見えるということはおかしな現象ですね。これは物理現象として明らかな 矛盾 です。加速度を持つためには当然力が必要です。力がないのに加速度を持つのはおかしい!という考えのもと、この現象を説明するために、クマちゃんから見たボールの加速度の方向に力がはたらいていると仮定します。
慣性力は「みかけの力」
この仮定した力は見かけだけの加速度を説明するための力であり、「 みかけの力 」や「 仮の力 」などと言われます。さて、図のボールにはたらく、このみかけの力は一体どれくらいになるのでしょうか。
力は運動方程式を用いて、質量と加速度で計算することができましたね。みかけの力の大きさをF[N]とするとき、Fはクマちゃんから見た加速度A[m/s2]とボールの質量mから、以下の式で表されます。
F=mA[N]
このみかけの力Fがまさに 慣性力 の大きさであり「観測者から見た物体の加速度に質量をかけたもの」となります。また慣性力の方向はクマちゃんの移動方向と逆向き、つまり 観測者の加速度の方向と逆向き となります。
観測者が加速度運動をするときは、慣性力を考える
慣性力Fは、観測者が加速度運動をするときに必要な力です。今まで物体にはたらく力といえば、「 重力 」と「 接触力 」の2種類だけでしたね。これはあくまでも運動を観測する人が 静止している場合 です。今回のクマちゃんのように、観測者が 加速度運動をしていた場合 には重力と接触力以外に 慣性力 がはたらいていると仮定しないと矛盾が起きてしまいます。
慣性力の特徴をまとめると、以下の通りです。
これらを踏まえて、先ほど慣性力がはたらく例として挙げた電車のつり革がなぜ傾くのか説明しましょう。
電車は加速度A[m/s2]で進んでおり、クマちゃんが電車の中にいるとイメージしてください。クマちゃんは電車とともに移動しているので加速度A[m/s2]で右に加速度運動していると言えますね。
ここでクマちゃんが天井から吊り下がっているつり革を見るとします。つり革は(観測者)=(クマちゃん)の加速度の方向の逆向きに慣性力がはたらくので、慣性力の方向は左向きになりますね。また慣性力の大きさは質量m[kg]とクマちゃんの加速度A[m/s2]を用いてmA[N]と計算することができます。この慣性力がはたらくことによって、電車のつり革が左側に傾いたということが説明できますね。
慣性力は 観測者が加速度運動をするときに考える ということをしっかりと覚えてください。
今回学習する 慣性力 は、皆さんが日常生活でよく体験する物理現象の1つです。