5分で解ける!慣性力の問題演習に関する問題
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この動画の問題と解説
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解説
どんな運動をするかイメージしてみよう
まず物体の運動について、イメージをしてみましょう。何も力を加えずにいると、斜面上の物体は滑り落ちてしまいます。加える外力Fが小さい場合も、斜面上の小物体は滑り落ちてしまいますね。また外力Fが大きすぎても小物体は斜面を登っていってしまいます。この 外力Fがちょうどよい大きさになったとき、小物体は斜面を登りもせず下りもしなくなります。 今回はこの力Fがちょうどよくなったときの大きさを求める問題です。
この問題の解き方は2通りあります。
1つ目は 「2つの物体(小物体、三角台)について、それぞれの運動方程式から解く」 という方法。そしてもう1つは 「2つの物体を1つの物体とみなす方法」 です。問題文から 小物体は三角台と一体となって とあるので、 1つの物体として考える ことができますね。物体が1つであれば、立てる運動方程式は1つで済むので、1つ目の方法よりも簡単に解くことができます。
「一体となって移動=1つの物体」
今回は、2つ目に紹介した 「小物体と三角台を一体とみなす方法」 で解いてみましょう。まずは図にして、はたらく力を考えてみます。
このような斜面にコブが出来たような物体として考えます。全体の質量は(M+m)[kg]になりますね。力F[N]は三角台の右から左に向かってはたらき、加速度a[m/s2]の方向も力Fと同じ方向に定めます。さてFのほかに、この物体にかかる力を考えます。まず下向きに(M+m)g[N]の重力がかかります。また床から受ける垂直抗力N'[N]があります。
運動方程式を立てるのに必要な、加速度と平行にはたらく力はFのみですね。質量(M+m)[kg]、加速度a[m/s2]、はたらく力F[N]を利用して運動方程式を立てると、次のようになります。
(M+m)a=F
力Fについての方程式を立てることができました。ただし、加速度a[m/s2]は未知の値なので、まだ答えにはなりません。
三角台から見ると「小物体は静止」
加速度a[m/s2]の値を求めるには、様々な方法があります。ここでは、一番楽に解ける 慣性力 を使った方法で考えていきましょう。
今回、小物体と三角台は一体になって移動していますね。ここで思い切って三角台の上に 観測者がいると仮定 します。
三角台の上から小物体を見ると、一体となって移動をするので小物体は 静止 しているように見えます。物体が静止しているときは、 力のつりあい から立式できましたね。
この小物体にはどんな力がはたらいていますか。
まず下向きに重力mg[N]がはたらきます。そして斜面から押し上げる力、垂直抗力がはたらきます。この垂直抗力をN[N]としましょう。
ここで観測者は、三角台とともに加速度a[m/s2]で左向きに加速度運動をしているということになります。観測者が加速度運動をしているときには、 慣性力 を考える必要がありましたね。慣性力は観測者の加速度と逆向きで右向き、大きさは小物体の質量m[kg]と観測者の加速度a[m/s2]を用いてma[N]となります。
「3力のつりあい」は「ベクトルの和が0」
あとは小物体の力のつりあいを考えれば、aを求めることができます。このように3方向に力がはたらいているとき、つりあいの考え方は2つの方法がありました。
1つは、水平方向と鉛直方向に力を 分解 してから考える方法。もう1つは、 力のベクトルをすべて足したときに力のつりあいは0になる という方法です。
今回は計算が楽な後者の方法で考えてみましょう。つまり原点から始まり、mgのベクトルが下向き、その先端から右向きのmaのベクトルを足し、そして最後に斜め上方向のNのベクトルを足すと原点に戻ってくるということになります。
また垂直抗力Nとmgの成す角度はθなので、 三角比 を利用すると、
tanθ=ma/mg
加速度a=gsinθと表すことができましたね。あとは (M+m)a=F に代入すれば、Fが求められますね。
一体となって動くときは1つの物体としてみなすことができること、運動する物体から静止する物体を見るとき慣性力を考えることに注意しましょう。
一体となって運動する物体の問題ですね。このような運動を考えるときのポイントは
①一体となって運動
②慣性力
③力のつりあい
です。先ほどのポイントの授業をよく思い返しながら、解いていきましょう。